演無 健忘症の書き散らし

虚言癖の独り言

太宰治 駆け込み訴え

そうきたか

 

太宰治

 

太宰治は例えば白昼真っ只中で野糞をしたというような話を人間の芯から滲み出る業として書くことのできる稀有な作家ですね。

 

行儀の悪い感性の鋭さ。大好きです。

 

「はい、はい。申し遅れました。私の名は商人のユダ。へっへっ。イスカリオテのユダ。」

 

最後のこの一文に「へっへっ」とわざわざいれるあたりが好きです。

 

この小説に関しては随所に見られるユーモアの行儀の悪い事この上ない。しかし笑える。

 

漫画セイントお兄さんに通ずるような宗教へのアプローチ。が太宰治のユダを通してのアンチキリスト表現は辛辣かつ生々しい。

タブーを笑いに変えてしまうあたりはこの人の生き様を感じる程です。

 

織田作之助にして「日本には宗教がなく、それが歴史的大作が生まれない所以だ」という日本という土壌で

 

「最近大人しくなってきていて心配だ」という織田作の心配をばっちり裏切っていく暴れん坊なこの作品に見える太宰治

 

最後のオチのように「へっへっ」とニヤついていたに違いない。